ピアノを弾いて彼女の心を満たしてあげるテクニック

俺が彼女を家に招く理由。それは下心がほとんどなのだが、ある特技を披露するためでもある。その特技こそ「ピアノ」だ。女性というのは、男性の腕や指が大好きなのだ。そんな腕と指のしなやかな動きをアピールできるのが「ピアノ」なのだ。そんな腕と指が美しいメロディーを奏でて、彼女の心を虜にしていく。この瞬間ほど達成感に溢れることはないだろう。

そもそも、男の部屋にピアノがあるっていう事実に彼女は驚愕するのだ。「え、お姉ちゃんと住んでるとか?」「誰かとルームシェアしてるの?」こんな質問が飛び込んでくるのは日常茶飯事。俺は、静かに否定するのだ。「俺に女兄弟はいないよ」「こんな狭い部屋でルームシェアできるほど、おおらかじゃないよ?」「そう。このピアノは俺のなんだ」すると、彼女は「すごーい!」と感激してくれる。そして。当然のごとく「何か弾いて!」とねだってくるのだ。「仕方ないなぁ。とりあえず一杯飲んでからにしようぜ?」俺はちょっとジラしながら、彼女の様子を伺う。きっと、男のピアノだから大したことないだろう、という表情がみてとれる。

しかし、俺のピアノはマジだ。俺はビールで乾杯して談笑も一盛り上がりしたところでピアノを弾き始めるのだ。ショパンの「別れの曲」。魂を込めた第一音が部屋に奏でた瞬間から、彼女はもうピアノの虜になっていく。もうビールを飲むのさえ忘れて音楽を全身に浴びているのだ。俺は感情を込めて弾いていく。彼女の視線は俺の腕と指に注がれる。俺が腕をまくっていたのは、わざとだ。この腕の筋肉と浮き出た血管を彼女に披露するために自然と準備しておいたのだ。曲を聞き終えて、うっとりしている彼女。「すごい、感動しちゃった」こんな台詞はたくさん言うが、「そろそろ終電だから、ごめん!」なんて言う台詞を彼女は発しない。もう催眠術にかかったように俺に夢中なのだ。自分の部屋に彼女を呼ぶなら、素敵な特技を披露するようにしよう。これだけで、ベッドに誘うのはとてもたやすくなるのだ。